
いよいよ明日はマラソン大会ですね。
これまで数ヶ月間、雨の日も風の日もコツコツと練習を積み重ねてきた成果を発揮する、とても大切な一日です。
今頃、明日のウェアやゼッケンの準備をしながら、ワクワクする気持ちと、ちょっぴり不安な気持ちが入り混じっているのではないでしょうか?
そんな中、「前日の今日はどんなふうに過ごそう?」「明日のために念入りに体を伸ばしておいたほうがいいのかな?」って気になりますよね。
私たちも、大事なレースの前はどうしても不安になって、少しでも不安を消すために、あれこれとやりすぎてしまうことがあるんです。
「ここでしっかり伸ばしておけば、明日足がつらないかもしれない」
そんなふうに考えてしまうお気持ち、とてもよくわかります。
でも実は、マラソン前日のストレッチには「やっていいこと」と「もしかしたら逆効果になってしまうこと」があるんですね。
良かれと思ってやったことが、かえって明日の走りを重くしてしまう原因になったら悲しいですよね。
そうならないためにも、この記事では、レース本番でベストな走りができるように、前日に最適な体の整え方を一緒に見ていきましょう。
今まで一生懸命頑張ってきたご自身の体を、今日は優しくいたわってあげる日です。
この記事を読み終わる頃には、きっと迷うことなく、リラックスした気持ちで明日のスタートラインに立てるはずですよ。
温かい飲み物でも飲みながら、どうぞ肩の力を抜いて読んでみてくださいね。
マラソン前日のストレッチは短時間で優しくほぐすのが正解

明日に備えて、体のケアをどうするべきか。
その答えを先にお伝えしますね。
マラソン前日のストレッチは、強く伸ばしすぎず、短時間で全身をゆるめる静的ストレッチを基本にするのが良いとされています。
「静的ストレッチ」というのは、反動をつけずに、ゆっくりと筋肉を伸ばしてその姿勢をキープする、一般的なストレッチのことですね。
体育の授業や、お風呂上がりによくやるような、あの「じわ〜っ」と伸ばすストレッチです。
このときの最大のポイントは、「決して頑張らないこと」なんです。
「えっ、頑張らなくていいの?」と拍子抜けしてしまうかもしれませんね。
でも、前日の目的は、柔軟性を極限まで上げることではなく、疲労を増やさずに体をレースに向けて整えることなんですね。
ですので、長時間かけて念入りにやりすぎたり、「痛いけれど我慢して伸ばす」といった強い負荷をかけたりするのは避けるべきとされています。
「あぁ、気持ちいいな」「体が少しほぐれたな」と感じる程度で、サッと終わらせてしまうくらいが、実はちょうどいいんです。
これまでたくさん走ってきたランナーさんは、ついストイックに追い込んでしまいがちですが、今日だけは自分を甘やかしてあげてくださいね。
なぜ前日のストレッチは「やりすぎ注意」なのでしょうか?

「でも、やっぱりしっかり伸ばしたほうが体に良さそうな気がする……」
そう思いませんか?
私たちも、ストレッチ=やればやるほど良いもの、というイメージを長く持っていました。
どうしてマラソン前日に限っては「短時間で優しく」が良いのか、その理由を一緒に見ていきましょう。
強いストレッチは筋肉や靭帯に負担をかけてしまうから
一つ目の理由は、私たちの体の仕組みに関係しています。
実は、長時間のストレッチや強いストレッチは、やりすぎると逆効果になりうると言われているんですね。
筋肉や、関節を支えている靭帯(じんたい)、そして軟部組織と呼ばれる部分は、私たちが思っている以上にデリケートにできています。
「明日のために!」と気合を入れて、無理な反動をつけたり、痛みを我慢してギュウギュウと強く伸ばしすぎたりすると、これらの組織に目に見えないほどの小さなダメージを与えてしまうかもしれないんです。
それが原因で、レース当日に痛みが出たり、なんだか足が重く感じたりといった不調につながることもあります。
これって、すごくもったいないですよね。
だからこそ、前日は「筋肉に負担をかけないこと」を最優先に考えてあげたいですね。
前日と当日ではストレッチの目的がまったく違うから
二つ目の理由は、走る前日と当日で、体に求められる準備がまったく違うからです。
最新のスポーツ科学や専門家の間でも、「前日と当日のストレッチは明確に使い分けるべきだ」という考え方が主流になっています。
前日の目的は、先ほどもお伝えしたように「疲労を抜いて、筋肉の緊張をリセットすること」です。
だから、ゆっくりと深呼吸しながら行う「静的ストレッチ」が向いているんですね。
一方で、レース当日の朝に静的ストレッチをやりすぎてしまうと、筋肉がリラックスしすぎてしまい、いざ走ろうとしたときに力強いバネを発揮できなくなる可能性があるんです。
これって、ちょっと意外な事実かもしれませんね。
では、レース当日はどうすればいいのでしょうか。
当日は、体温をしっかりと上げて、関節の動く範囲(可動域)を広げるために、「動的ストレッチ」を行うのが推奨されています。
動的ストレッチというのは、軽いジョグやウォーキング、足を前後にブラブラと揺らすレッグスウィングなど、動きながら筋肉をほぐしていく方法のことです。
アシックスなどのスポーツメーカーや、ランナーをサポートする専門家の解説でも、走る直前は「ウォーミングアップとして動く準備をすること」がとても重視されているんですね。
心と体をリラックスさせるための時間だから
三つ目の理由は、メンタル面への良い影響です。
マラソン前日は、どれだけ経験豊富なランナーさんでも、少なからず緊張しているはずです。
「明日は完走できるかな」「自己ベストを出せるかな」と、頭の中で色々なことを考えてしまいますよね。
緊張しているとき、人間の体は無意識のうちに力が入って、筋肉がキュッと硬くなってしまうんです。
そんなときに、痛みを伴うような激しいストレッチをしてしまうと、体は「攻撃されている!」と勘違いして、さらに緊張を強めてしまうかもしれません。
だからこそ、前日のストレッチは「体を安心させてあげるためのサイン」として行いたいんですね。
「もう頑張らなくていいんだよ」「明日に向けてゆっくり休もうね」と、自分の体に優しく語りかけるような気持ちで、ゆっくりと伸ばしてあげる。
そうすることで、自律神経がリラックスモード(副交感神経が優位な状態)に切り替わり、夜もぐっすりと深く眠れるようになるはずですよ。
マラソン前日に実践したい!心と体を整えるストレッチの具体例

ここまで読んでいただいて、「よし、前日は優しく短時間で済ませよう」と思っていただけたのではないでしょうか。
では、ここからは具体的にどんなストレッチをすればいいのか、おすすめのメニューをいくつかご紹介しますね。
どれも簡単にできるものばかりなので、ぜひ一緒にやってみてください。
入浴後の温まった体で行うリラックスメニュー
ストレッチを始める前に、一つ大切なポイントがあります。
それは、お風呂上がりの、体が温まった状態で行うということです。
体がポカポカしているときは、筋肉も自然と柔らかくなっているので、無理なく安全に伸ばすことができるんですね。
全体を通して、5分から長くても15分程度でサクッと終わらせるのがコツです。
一つのポーズは20秒〜30秒くらい、心地よく伸びているのを感じながら深呼吸を繰り返してみましょう。
具体例1:股関節と太ももを優しく伸ばすストレッチ
マラソンにおいて、脚のエンジンとなるのが「股関節」と「太もも」です。
ここの緊張を解いてあげると、明日の足取りがふっと軽くなるかもしれませんよ。
- まずは、床に柔らかいマットやバスタオルを敷いて、仰向けにゴロンと寝転がります。
- 右膝を両手で優しく抱え込み、息を「ふーっ」と吐きながら、ゆっくりと胸の方に引き寄せていきましょう。
- このとき、左足は床から浮かないように、自然に伸ばしたままにしておくのがポイントです。
- お尻から太ももの裏側にかけて、じんわりと伸びているのを感じながら、20秒ほどキープします。
- ゆっくりと元に戻したら、左足も同じように行ってみてください。
次に、太ももの前側も伸ばしてあげましょう。
- うつ伏せに寝転がり、右手で右足の甲をつかみます。
- かかとをお尻に近づけるように、優しく引っ張ります。
- 太ももの前側が心地よく伸びる場所でストップして、深呼吸を繰り返します。
- 終わったら、左足も同様に行います。
痛いところまで無理に引っ張らないようにだけ、気をつけてくださいね。
具体例2:ふくらはぎと足裏の疲労を和らげるケア
地面を力強く蹴り出す「ふくらはぎ」と、着地の衝撃を受け止めてくれる「足裏」も、ランナーさんにとっては大切なパートナーですよね。
ここもしっかりと、でも優しくケアしてあげましょう。
- 壁の前に立ち、両手を壁につきます。
- 右足を一歩後ろに引き、左足の膝を軽く曲げながら、体重を前の方にかけていきます。
- 右足のかかとは床にピタッとつけたままにしておくと、ふくらはぎからアキレス腱にかけてが気持ちよく伸びますよね。
- 反動をつけずに、じわーっと20秒ほど伸ばしたら、足を入れ替えます。
足裏のケアは、座ったままで簡単に行えます。
- 床や椅子に座り、片足をもう片方の太ももの上に乗せます。
- 両手の親指を使って、足の裏全体を優しく押して揉みほぐしてあげましょう。
- 特に、土踏まずのあたりやかかとの周りは疲労が溜まりやすいので、労うように優しく押してあげてくださいね。
- 足の指と手の指を組んで、足首をゆっくりと回してあげるのも、とても心地よいのでおすすめです。
具体例3:上半身の緊張を解く肩甲骨まわりのストレッチ
「マラソンだから脚のストレッチだけでいいかな?」と思うかもしれませんね。
でも実は、上半身の力みを取ることも、同じくらい大切なんですね。
腕振りがスムーズになると、自然と脚も前に出やすくなりますし、胸が開くことで呼吸も深くなるんです。
- 床にあぐらをかいて座るか、椅子に浅く腰掛けます。
- 両手を体の後ろで組みます。
- 息を吸いながら、組んだ両手を斜め下に向かってグーッと引き下げ、同時に胸を斜め上に突き出します。
- 左右の肩甲骨が中央にギュッと寄っているのを感じながら、そのままの姿勢でゆっくりと深呼吸を3回繰り返しましょう。
- 息を吐きながら、パッと手を離して脱力します。
これを行うと、肩周りのスッキリ感が全然違いますよね。
猫背になりがちな姿勢もリセットされるので、ランニングフォームも美しく保てるはずですよ。
もしかしたらやっていませんか?前日に避けたいNG行動
ここまでおすすめのストレッチをお伝えしてきましたが、反対に「前日は避けたほうがいいこと」もいくつかあります。
もしかしたら、知らず知らずのうちにやってしまっているランナーさんもいるかもしれませんので、一緒に確認しておきましょう。
1. 痛いのを我慢して伸ばすこと
何度も繰り返してしまいますが、これが一番のNGです。
「痛気持ちいい」の「痛い」が少しでも勝ってしまうと、筋肉は防衛本能で逆に硬くなってしまいます。
「気持ちいい」だけで十分なんですね。
2. 反動をつけてグイグイと伸ばすこと
「1、2、3、4!」と反動をつけるストレッチは、筋肉を痛める原因になりやすいとされています。
前日は、ゆっくりと息を吐きながら、じわーっと伸ばすことを心がけてくださいね。
3. 長時間歩き回ること
せっかく遠方から大会に参加される場合、前日にエキスポを楽しんだり、観光地を巡ったりしたくなりますよね。
そのお気持ち、とてもよくわかります。
でも、前日に長時間歩きすぎてしまうと、気づかないうちに脚に疲労が溜まってしまいます。
できれば、前日は座る時間を増やして、脚を休ませてあげるのがいいとされています。
もし体を動かすとしても、ごく短いジョグ程度にとどめておくのが無難なんですね。
すべては、明日のスタートラインに最高の状態で立つための準備です。
今日は少しだけ我慢して、レースが終わった後のご褒美にとっておきましょう。
マラソン前日のストレッチで最高のコンディションを作るために

色々なことをお話ししてきましたが、いかがでしたでしょうか?
最後に、この記事でお伝えした大切なポイントを分かりやすくまとめておきますね。
明日への不安が少しでも軽くなっていれば嬉しいです。
- マラソン前日のストレッチは、短時間で行う静的ストレッチが基本です。
- やりすぎや長時間のストレッチは、筋肉や靭帯に負担をかけるため逆効果になり得ます。
- 「気持ちよく伸びる程度」で止めて、決して痛みを我慢しないでくださいね。
- 入浴後の、体がポカポカと温まった状態で行うのがベストタイミングです。
- 下半身(股関節、太もも、ふくらはぎ、足裏)だけでなく、上半身(肩甲骨)もケアして全身の緊張を抜きましょう。
- レース当日は、前日とは逆に、体を温めて可動域を広げる「動的ストレッチ」が推奨されています。
これさえ覚えておけば、もう前日の過ごし方で迷うことはありませんよね。
どうか安心して、リラックスした夜をお過ごしください。
明日のスタートラインに立つあなたへ

明日の朝、目が覚めたら、いよいよ本番ですね。
きっと、スタート地点にはたくさんのランナーさんが集まっていて、独特の熱気と緊張感に包まれていると思います。
周りの人が念入りにストレッチをしているのを見ると、「私ももっとやらなきゃ!」と焦ってしまうこともあるかもしれません。
そんなときは、この記事の内容を思い出して、深呼吸をしてみてくださいね。
あなたは今日まで、本当にたくさんの努力を重ねてきました。
きつい練習を乗り越えてきたご自身の体を、まずはたっぷりと褒めてあげてほしいと思います。
前日は体を優しくいたわり、当日は動的ストレッチでしっかりとエンジンをかける。
このメリハリが、あなたの中に眠っている力を最大限に引き出してくれるはずです。